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わたしは、あなたに仕事を依頼したんですよ。
超一流の有名なデザイナーにデザインを依頼したケースを考えてみましょう。
お客さんから依頼を受けたあと、有名なデザイナーは「私は忙しいから、最近独立した一番弟子にやらせよう。」と考えて一番弟子に電話をかける 。
一番弟子は、「師匠、私だって忙しいんですよ〜とりあえず引き受けますが・・・」と仕事を引き受ける旨を伝えて電話を切った後、こう考えた。
「はぁ・・・そうだ最近入ってきた新人にやらせよう。見込みがありそうな新人だし」
上記の例のように、依頼人にとっては、最初は超一流の有名デザイナーに依頼したにもかかわらず、最後はその有名デザイナーの一番弟子の、その弟子によってデザインが作成されることになっています。
このケースが再委託・再々委託の例となります。
図にすると下のようになります。
依頼人
↓
有名デザイナー (委託先)
↓
有名デザイナーの一番弟子 (再委託先)
↓
一番弟子の弟子 (再々委託先)
そこで、このようなことを防止するために、業務委託契約書の雛形には再委託(再外注)を制限する条項が見受けられます。(条項例は下記)
(業務委託契約書の雛形で見られる再委託を制限する条項例)
甲が委託業務の重要な一部または全部を第三者に再委託する場合、甲の事前の書面による承諾を得るものとする。
ただし、再委託(再外注)を制限する規定にも落とし穴があります。
上記の雛形の条項例を見てみましょう。
(条項例)
甲が委託業務の重要な一部または全部を第三者に再委託する場合、甲の事前の書面による承諾を得るものとする。
【業務委託(外注)する側にとっての落とし穴】
上記の条項の場合、業務委託(外注)する側にとっては無断で再委託されるということは無いので一見すると素晴らしい条項のように見えます。
しかし、全ての業務ではなく一部の業務を再委託する場合、上記の条項では依頼者の承諾は必要でしょうか。
結論は、必ずしも依頼者の承諾は必要ありません。
つまり、業務の一部については依頼者に無断で再委託できる余地があります。
理由は、条項が「重要な一部」となっており、なにが重要な業務か当事者間で認識がずれる可能性があります。そのため、無断で再委託(再外注)した側は、「再外注した業務は重要な業務ではない」と反論を与える余地を残しているからです。
「えっ?高い料金払ったのにこれだけしかやってくれないの。」
【具体例】
「私の会社のホームページを新しく作り直したい。
よし、ホームページの作成を外注しよう! 」
このような場合に、業務委託契約を作成することになります。
その業務委託契約書の中で、委託する業務の内容(外注する作業の内容)を明記する条項があります。 簡単な条項例を挙げてみましょう。
(業務委託契約書の雛形の条項例)
甲は乙に、ホームページ作成業務を委託する。
この条項こそ、委託業務(外注業務)を定めた条項です。この条項が存在しないと、そもそもどのような業務を外注するのかわかりません。
従って、業務委託契約書の雛形には必ず盛り込まれる条項です。
しかし、委託業務(外注業務)の内容を定めた条項にも落とし穴があります。
上記で記載した雛形の条項例をもう一度見てみましょう。
(業務委託契約書の雛形の条項例)
甲は乙に、ホームページ作成業務を委託する。
上記の条項のままですと、乙は、ホームページ作成だけを行うのか、アクセス解析やSEO対策までやってくれるのか、さらにホームページの中身の文章も書いてくれるのか、委託業務の内容について当事者間で認識がずれる可能性があります。
委託業務の認識がずれることによって、
【委託する側】にとっては
高い代金を払ったにも関わらず、これだけしかやってくれないの?とトラブルになる可能性があります。
【受託する側】にとっては、
委託業務の内容があいまいだと、委託業務に関連する業務をお客様からすべて御願いされるという可能性がでてきます。そして、お客様のご要望のため断れないということで、過度に安い料金でサービス提供する羽目になってしまう恐れがあります。
従いまして、委託業務の内容は、明確に定めるべきといえるでしょう。
■業務委託先なのか社員なのかを見分ける基準
業務委託先を多く使う企業は注意が必要です。
なぜなら働いている人が業務委託先の人なのか社員なのかは、法律で明確な線引きがないからです。
会社側の認識では業務委託先であり、外注費(消費税の控除をとってる)として計上している場合でも、税務調査で社員であり、人件費(消費税の控除はとれない・源泉所得税の対象となる)として計上すべきであり、源泉所得税の徴収漏れだと言われてしまうこともあります。
そこで、法律で明確な線引きがない代わりに、一つの考え方の基準として、以下のようなものが挙げられます。
・時給、日給、月給で報酬が支払われる場合=社員
・時間、場所の拘束性がある場合=社員
そのため業務委託契約書では、「乙(業務委託先)が本件業務を行う場合、甲は乙の時間及び場所の拘束を行わないものとする」といった条項が必要となってきます。
・その契約の内容(仕事の内容)が他人と入れ替わることができる場合=社員
・仕事の個々の作業について、指揮監督を受ける場合=社員
・まだ仕事が終わっていない段階で、納品すべき物などが不可抗力で壊れても、働いた分のお金を請求できる場合=社員
・材料、作業用具が提供されている場合=社員
業務委託先であれば自分で調達してくるはずですので、業務委託契約書では、「乙(業務委託先)は本件業務を行うにあたり、必要な材料、機器等がある場合、乙の負担にて準備するものとする」といった条項が必要となってきます。
・賞与が有る場合=社員
・社宅へ居住する場合=社員
・電話帳への記載がある場合=業務委託先
・向こうから請求書が発行されている場合=業務委託先
以上のような基準を参考にして業務委託契約書を作成すれば、業務委託先であったものを社員だとみなされるおそれはなくなるでしょう。
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行政書士 柏崎 幸一 (Blog)山形生まれの横浜育ち
(12月25日生まれ)
中央大学法学部卒
たとえ面倒でもオリジナルの契約書を作ることの重要性を理解して頂けると幸いです。
私が契約書にかけるのはそんな想いです。
きっかけは、法務マン時代の苦い失敗談にあります。
前職では、2日に1通というペースで契約書を作成・チェックしていました。私が年間に作成・チェックした契約書は100通以上にのぼります。
法務マンとして働いていたある日のこと、私は忙しさのあまり契約書のひな形をコピー&ペーストしてしまいました。
「やっとできた」
契約書を作り終え、ほっとしたのも束の間、後日上司に呼び出され「営業の人たち全員に謝りに行け!!」と叱責されてしまいました。
慌てて先日作った契約書を見直してみると、契約書の主語と述語が逆になっており、会社にとって不利な契約内容となっていました。これでは、上司や営業の方々が怒るのも無理はありません。もちろん、会社にも迷惑をかけてしまいました。
それ以来「契約書の6割は形式だ。主語と述語には特に注意しなくては」と考えるようになりました。
ひな型に頼ったばかりに失敗した事例はこれにとどまりません。
裁判すれば数千万円の損害賠償を請求できたにもかかわらず、「上限320万円」というたった7文字の損害賠償条項が契約書に入っていたばかりに、裁判せずあっさり負けてしまったこともあります。
ひな型に頼らず、自分で契約書を作っていたら、少なくとも戦わずに負けるということはなかったと考えています。
一連の失敗から「同じ名前の契約でも、契約ごとにリスクが違う。安易にひな形に頼ると拾いきれないリスクが生じてしまう」ということを学びました。
面倒でも、コストがかかってでも、契約書は一からオリジナルのものを作らなくてはいけない。
また、それでもひな型に頼らざるを得ない事情がある人もいることを踏まえて、より多くのリスクに対応できるひな形を作ろう。そう心に誓いました。
「簡単なひな形に頼るべきじゃなかった」
「こんなことになるなんて思っていなかった」
後で後悔しないためにも、オリジナルの契約書を作るようオススメしたいと思います。
ご連絡お待ちしています。